健康と美容のために

命にかかわる大切な血管と血液の常識

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しなやかで滑らかな強い血管は認知症になりにくい

私たちの身近には、高齢にも関わらず、驚くほど若く見える人がいる一方で、若者でありながら、枯れ木のように老け込んででいる人も少なくありません。若い頃はスポーツとは無縁だったのに、中年を過ぎてから健康を意識し始め、ウォーキングを皮切りにジョギングを楽しむようになり、とうとうフルマラソンを走りきった高齢者がいるかと思えば、駅の階段を駆け上がるだけで、息を切らしてしまう若者もいます。

私たち人間に共通しているのは、病気やボケとは疎遠な生活を続けたいという願いです。血管年齢とは、血管の老化度を意味します。いわゆる、動脈硬化の進行具合のことです。かつて、動脈硬化によって血管年齢が老化してしまうと、もう二度と若返ることはできないと考えられていました。

しかし近年、正しい医学常識に基づいて、悪しき生活習慣を正して、必要に応じて適切な治療を受けることにより、動脈硬化が退縮する、つまり血管年齢が若返ることが分かってきたのです。血管は全身に張り巡らされ、生きていくために必要な栄養や酸素を各細胞に送り届けています。脳梗塞や脳出血などの脳卒中は脳が悪くて起こる病気ではなく、脳を養う動脈が詰まったり破れたりすることで生じる病気です。
 
ひとたび脳卒中を発症すれば、麻痺や認知症などの後遺症が残ります。たとえ症状が出ないほどの小さな脳卒中でもそれが多発することで認知症の原因になります。最も脳という臓器は複雑な側面を持っていて、動脈硬化はかなり進んでいてもボケを感じさせない人がいる一方で、血管の状態はいいのに認知症気味の人もいます。
 
ある修道女の死後、解剖室で脳を調べたところ、医学的には認知症の脳に近かったが、同僚の修道女たちが全く彼女のボケを感じなかったという記録もあります。この事例は、残された正常な脳の機能をフル活用することで失った能力をカバーすることも可能であることを示唆しています。
 
しかし、そのためには私たちの想像を超える多大な努力を必要とすることはいうまでもありません。肌の手入れと同様に、血管のケアも早ければ早いほど効果的です。血管は壁全体がしなやかなほど、そして内壁が滑らかで内腔が保たれているほど強い状態といえます。認知症を予防するためには、詰まったり破れたりしない「強い血管」を手に入れることが大切なのです。
 

血管の老化は若くして始まっている

厚生労働省が発表した「人口動態統計の年間推計」によると、2012年の日本人の死因順位は次のようになっています。

 
1位:悪性新生物
 2位:心疾患
 3位:肺炎
 4位:脳血管疾患

 
これに対して、2001年の死因は、次のようになっていました。

 
1位:悪性新生物
 2位:心疾患
 3位:脳血管疾患 
4位:肺炎

 
比べてみると、3位と4位の死因が入れ替わったことになります。
 
2001年は、3位が脳血管疾患で4位が肺炎でした。その要因は、脳血管疾患の最大のリスクである高血圧の対策が進んだことによります。しかし、まだまだ不十分であり、生活習慣病はむしろ増加し、その若年化が問題となっています。ちなみに、2012年も一位の座を占めている悪性新生物(癌)の死亡数は、36万963人です。

そして、心疾患は19万88362人、脳血管疾患は、12万602人です。心疾患と脳血管疾患を合わせた死者数は、32万4382。つまり、悪性新生物による死亡数に、ほとんど匹敵する数の人が、動脈硬化が引き金となる病気で亡くなっているのです。
 
しかも、生活習慣病の若年化とともに血管の老化現象が始まる年齢が、どんどん早くなっています。普通は40歳以降から動脈硬化のリスクが高まってくるのですが、最近はもっと若い年齢で血管が老化する人が増えています。40歳から血管の老化が始まるというかつての常識は、いまや、通じなくなっているのです。1988年頃は、新しい傾向として、20代と30代で、生活習慣病が現れ始めていることが指摘されていました。
 
ところが、今は小学生の間で、生活習慣病が見られます。小児生活習慣病という言葉も使われるようになっています。その最大の原因は、肥満(メタボ)です。例えば、肥満が原因で睡眠中に無呼吸に陥る子供が現実にいます。先天的な病気による無呼吸は昔からありましたが、最近は肥満が原因で、このような症状を示す子どもが増えているのです。つまり、子供が「オヤジ化」しているわけです。
 
ただ、ウイルス感染などが原因となって発症する一型糖尿病の子供もいるので、これについては、小児生活習慣病とは区別しなければなりません。近年、動脈硬化が始まる年齢は、確実に若くなってきています。従って、動脈硬化の先にある脳卒中や心筋梗塞を発症する年齢も、どんどん若くなってきているということです。その背景には、食生活の欧米化やストレスの増加、さらには運動量の減少を招く生活環境の悪化など、いろいろな要因があるのではないかと推測します。
 

自律神経が血管の老化スピードをコントロールする

私たちの体はさまざまな環境の変化に適応するために、さまざまな神経による調節を行っています。脳から脊髄までを中枢神経.それより末端に分布している神経を末梢神経といいます。そして、末梢神経が自らの意思で動かすことのできる体性神経と、無意識のうちに働き自分では調節できない自律神経があります。
 
心臓の収縮力や心拍数、血管の収縮や拡張は、全て自律神経によって無意識のうちに調節されています。従って、自律神経が乱れると心拍数や血圧が正常にコントロールされず、高血圧や脳心血管系リスクが増してしまいます。
 
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。このうち、交感神経は血圧のコントロールの異常となった状態、すなわち、高血圧の発症に深く関わっているのです。交感神経は、心拍数を増加させて心臓の収縮力を強くします。そして、手足の先などの末梢の血管を収縮して血液を流れにくくし、血量に対する血管の抵抗を強めます。血圧は心臓から血液が送り出されることによって血管内にかかる圧ですから、心臓から勢いよく多くの血液が送り出されるほど、そしてその血液を受け入れる血管の抵抗が強いほど、血圧が高くなるのです。
 
また、交感神経は腎臓において、ナトリウムを体に溜め込むような働きをします。血管内のナトリウムは水を呼び込む性質があるので、全身の血管内を流れる血液量が増え、さらに血圧が高くなります。
 
さて、血圧が急速に上昇した場合、今度は血圧を下げる必要があります。そのためにはまず、高くなった血圧を感知する必要がありますが、そのセンサーは圧受容器と呼ばれ、頸動脈と大動脈弓(心臓から首の方に向かって出た大動脈がお腹の方へUターンする部分)の血管壁にあります。
 
圧受容器で血圧の急上昇を察知すると、その信号は脳へ伝えられ、交換神経の活動が抑制されるとともに副交感神経が高まり、心拍数が減少します。また、交感神経の活動が抑制されることによって末梢血管の収縮は解除されて拡張し、肝臓のナトリウムの再吸収の勢いも弱まり、血圧は低下するのです。高血圧の原因がはっきりしない「本能性高血圧」ですが、その約50パーセントで交感神経の活動性が高まっており、脳心血管系の疾患および死亡のリスク増加と関連することが分かっています。
 
血管汚内側には内皮細胞という一層の膜があり、動脈硬化の進行を防いで血管をしなやかに開く働きをしています。しかし、高血圧になると血管内皮が障害され、動脈硬化が進行しています。このとき、交感神経の緊張状態が加わると、さらに血管内皮の障害が強まり動脈硬化の進行に拍車がかかるのです。同様に肝臓や心臓の機能障害も進み、心不全や不整脈を引き起こしやすくなります。
 
近年では、交感神経の緊張が肥満や糖尿病、およびこれらが合併するメタボリックシンドロームの発症にかかわっていることもわかってきたのです。このように、交感神経の緊張は実にさまざまは臓器の障害を引き起こすのです。血管年齢の老化のスピードを遅らせ若返らせるためには、交感神経の過度の緊張を避けることが大切です。交感神経の緊張は、種々の身体的あるいは精神的なストレスによって生じます。入浴中に亡くなる人は、全国で年間約1万4000人と推測されています。このような事故は特に冬に多く、その原因の多くが温度差によるヒートショックと考えられています。まず、脱衣時の寒冷刺激や熱いお湯に入った直後の温度刺激によって過度の交感神経の緊張が生じ血圧が急上昇します。そして、その後は温浴中に対応調節のため血管が拡張して血圧が下がります。さらに、発汗によって脱水傾向となるため、ますます血圧が低下しやすくなります。このような血圧の急激な変化は、脳卒中や心筋梗塞の原因となるので注意が必要です。
 
また、家庭や職場でのストレスも交感神経を緊張させ、血圧や脈拍数を増加させるので、日頃から良質な睡眠をとって過度な運動をするなど生活の工夫も大切です。通常、夜寝ている間は副交感神経が優位になり、血圧が10~20パーセントぐらい下がります。
 
ところが、不規則な生活で体内時計が狂っていたり、睡眠時無呼吸症候群があったり、アルコールを飲みすぎたりすると、副交感神経が優位にならず、夜間に血圧があがるなどの症状が現れます。また、夜、夢を見ているとき眠りも浅く、交感神経が不規則に優位になります。血圧も正常な睡眠時のレベルよりも高くなり、血管も収縮しやすい状態になっています。夜、ぐっすり眠れても、明け方になると人間の体は、副交感神経から交感神経へ切り替わります。目覚めに向けて交感神経の緊張が高まっていきます。
 
これは、日中の活動に向けた準備を脳が命じている結果にほかなりません。長い間人間は、日没とともに体を休め、日の出とともに活動する生活を営んできました。その結果、体の働きもそれに順応するようになったのです。
 
その意味では、夜間に働くことは体のリズムを乱す要因と言えます。早寝早起きが、最も健康に適しているのです。昼夜が逆転した生活は、自律神経に悪影響を及ぼします。それが不必要に心拍数や血圧を上げて、動脈硬化を進行させ血管年齢を高める原因になります。
 

心筋梗塞は心臓ではなく血管の病気

口論をすれば、交感神経が優位になり血圧が上がります。口論が終われば、次第に血圧も下がります。この血圧の上昇が動脈硬化を進め、血管年齢を上げる主な原因になるわけですが、私たちが漠然とつあっている血圧という言葉は、何を意味するのでしょうか。血圧とは、血管内から血管壁にかかる圧力のことです。圧力が強すぎると、当然、血管の壁が傷つきやすくなります。血管に柔軟性があれば、血圧は低くなります。当然、血管の「事故」にあうリスクも低くなります。
 
逆に血管に柔軟性がなくなり内腔がs膜なれば、血管の抵抗が高まり血圧は高くなります。細かいホースを水道につなぎ水量をあげると、ホースに強い圧力がかかるのと同じ原理です。高血圧になると、血管に負担がかかり、血管壁の内側にあり血管を守る働きをしている血管内皮細胞の機能に障害が生じ、動脈硬化などの原因になります。それがさらに血圧を上昇させる悪循環を生みます。動脈硬化によって引き起こされる病気を利器するためには、体内にどのような血管が走っているのかを知る必要があります。そうすることで、様々な病気は、どの血管障害なのかを理解できます。
 
例えば、狭心症や心筋梗塞は、心臓を支配している冠動脈の障害により起こる疾患です。心臓そのものが原因で起こるようなイメージがありますが、厳密には心臓を支配する冠動脈が主に動脈硬化によって細くなったり詰まったりして、血液供給が不十分になり、しんぞうの障害を生む病気です。
 
狭心症や心筋梗塞は、血管の病気ともいえるのです。脳卒中も、脳が悪くて発症するのではありません。脳を養うために張り巡らされた動脈が、詰まったり破れて出血したりして発症するのです。そして、やっかいなことに血管の病気は、血管の内腔が詰まったり壁が破れたりするまでは、はっきりとした症状が現れにくいという特徴があります。
 

動脈は3つの層からできている

血管が老化して動脈硬化が進むと、それに伴って病気になるリスクが高まります。しかも、脳梗塞や心筋梗塞など、生命に直接かかわる病気もあります。となれば病気になる前に、血管年齢を若く保つ努力をすることです。そして、動脈硬化を防止する対策をとる必要がありあす。そのためには、まず動脈硬化がどのようにしてはじまり、進行するのかを常識として知っておく必要があります。
 
医学の話はとかく難しいと思われがちですが、だれにでも分かるように医学の常識を説明していきたいと思います。
 
まずは、動脈の構造についてです。動脈の壁は、外側から外膜、中膜、内膜(内皮細胞)の3層構でできています。外膜は、血管の表面を外から覆う役割をしています。中膜は、血管の収縮や拡張にかかわり、血管壁の堅さを決定する部分です。大動脈の中膜には、しなやかさを保つ弾性繊維(エラスチン)と風苦言力を担う膠原繊維(コラーゲン)が豊富です。これらの2種類の繊維の働きにより、大動脈は心臓から出た血液をしなやかに広がりながら一旦受け止め、続いてもとの形に戻りながら調節は受けていません。大動脈の壁には、平滑筋がほとんどなく、神経のコントロールによる収縮や拡張は行われていないのです。
 
一方、中大動脈から細胞脈までの血管壁いは弾性繊維や膠原繊維は少なく、かわりに平滑筋という筋肉が豊富です。この筋肉は自律神経でコントロールされていれ、交感神経が緊張すると収縮して内腔が狭くなります。細動脈は抵抗血管とも呼ばれ、血圧を調節する役割を担っていて、動脈硬化によって壁が厚く硬くなり、内腔が狭くなると抵抗が増して血圧が上昇します。さらに、動脈硬化の有無にかかわらず、ストれ鵜や寒冷刺激などによって交感神経が緊張すれば、血管が収縮して血圧が高くなるのです。最後に、血管汚最も内側にあるのが内膜です。内膜は、血液と血管のバリアとしてだけではなく、大切な機能を持った膜なのです。内膜は、血管内細胞がシート状に並んでできています。そして、内皮細胞からは、血管を正常に機能させるための様々な生理活性物質が分泌されています。例えば、ジョギングなど酸素を体内に取り入れる運動をすると、一酸化窒素(NO)が分泌されやすくなり、その働きによって血管音中膜の平滑筋を拡張させ、血管が広がりやすくなります。高血圧の対策として、ジョギングなど軽度の運動が推奨される根拠がここにあるのです。ちなみに内皮細胞の機能は、加齢とともに衰えていきます。それをいかにして遅らせるかが、血管年齢を若く保つ秘訣といえます。
 

血液の質が悪くなると動脈が衰えるリスクが高まる

動脈硬化のリスクが高い高血圧は、高い内圧により血管壁が障害を受けます。血管の動脈硬化を鉄の「サビ」に例えれば、表面が傷つくことによって、錆びてしまうよな状態です。しかし、動脈硬化には高血圧とは別のリスクファクターもあります。その代表格が、脂質異常症や糖尿病などによる血液の質の悪化です。血液の質的な変化が動脈硬化の原因となり、血管年齢を上げるのです。塩水に鉄を浸しておくと化学変化を起こして錆びるように、血液の質が以上になると血管が錆びます。
 
簡単に、血液の組織・成分について説明しましょう。血液は約55~60パーセントが血漿で、摂家級が約40~45パーセント、白血球が1パーセント、それに血小板が1パーセント未満です。血液の有形成分の96パーセントは、赤血球が占めています。赤血球の袋の中には、ヘモグロビンが無数に詰まっています。これが体の隅々まで酸素を運搬します。酸素が薄い高地に住むと、それに体を順応させるために血液中のヘモグロビンが増えます。この原理を利用して陸上競技の長距離選手が、レース前に高地トレーニングを実施することはよく知られています。
 
また、白血球は体内に侵入した最近や異物を殺す役割を担っています。白血球には、「顆粒球」「リンパ球」「単位」があります。例えば、傷口から病原体が侵入するとただちに脳が白血球に出動を命じます。人間の体を国に例えると、白血球は防衛部隊ということになります。血小板には血液凝固因子を含んでいて、血漿に含まれる凝固因子と連動して血液を凝固させる働きがあります。血漿の約90パーセントは水です。それ以外には、凝固因子などのタンパク質が含まれています。血漿は、栄養素やホルモンを運びます。また、老廃物や余分な水分を排出します。には、体温の調節や体の保護、止血などの作用もあります。プラークが傷ついたり破裂したりすると、血小板と血漿成分の働きで、修復減少が起こります。これは、本来であれば外傷によりう出血を防ぐために役立つ体の防衛反応ですが、血管の内側に生じた場合には、血栓ができるリスクも生じます。
 
血液の質を悪化させ、動脈硬化を進める代表的な疾患は、脂質異常症と糖尿病です。血液の質というと「サラサラ」か「ドロドロ」かということがよく問題にされますが、実は生理的な範囲内では、このことはあまり血管事故とは関連性がないのです。なぜなら血管の壁に傷がつけば、そこには血小板を中心とした血栓がつくられるからです。
 
血液がサラサラになる食材を食べたとしても、ケガをした際にはきちんと出血が止まります。つまり、血管壁に傷が生じて血栓がつくられるという現象に対しては効果が期待できないのです。大切なことは、動脈の壁を錆びつかせないような血液の質を保つということなのです。
 

血管事故は体の様々な部位で起こる

血管は私たちの体中に張り巡らされ、60兆個もの細胞からなる様々な臓器の血流の循環を担っています。心臓から出た血液は、まず大動脈へと流れ込みます。大動脈はまず、心臓を養う3本の冠動脈を分岐します。冠動脈は右側に1本、左側に2本枝分かれして、心臓を包み込むようにして走るストローほどの太さの血管です。この血管委動脈硬化が進行すれば心臓への血流に障害が生じ、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を引き起こします。
 
大動脈は冠動脈を分岐したあと上行し、間もなく胸の方でUターンして下行します。Uターンする部分では、腕と頭頸部へ向かう動脈を分岐します。脳を養う頸動脈はちょうど左右のあごの下あたりを走行しているので、手を当てればその拍動を触れることができます。そして、脳の血管が動脈硬化によって詰まれば脳梗塞を、破れれば脳出血やくも膜下出血などを引き起こします。
 
一方、腕の血管は手首から指先までつながりますが、この血管は手首で最も触れやすいので脈を調べる際に利用されます。具体的には、患者の親指の付け根に近い手首の内側の部分に、人差し指と中指、あるいは薬指などを軽く充てることによって触診を行います。
 
さて、大動脈は胸部から腹部にかけて脊椎や肝臓、腸、腎臓などの内臓への動脈の枝を出しながら下行します。大動脈の直径は3~4センチで、その壁にはゴムのような弾力性があります。そして、心臓から送り出される血液を一度しなやかに膨らんで受け止め、続いてもとの太さに戻りながら先へ先へと押し出す補助ポンプのような働きをしています。老化や生活習慣病によって大動脈動脈硬化が生じると、大動脈は弾力性を失い硬くなってしまいます。すると、心臓から出た血液は大動脈のクッションのような働きを受けずに、一気に全身の血管に流されるようになってしまいます。心臓は全身の血管の抵抗を受けて負荷が大きくなり、全身の血管は一気に流れ込んでくる血液によって血圧が上昇し、動脈硬化に拍車がかかってしまうのです。
 
動脈硬化を起こした大動脈自体にも重大な問題が生じます。動脈の壁がもろくなり、内圧に負けて外に膨らめば大動脈瘤を発症します。大動脈瘤が大きくなればやがて破裂して致死的な大出血を起こします。これば大動脈瘤の破裂です。また同膜効果によってもろくなった壁に亀裂が生じ、ちょうど竹を縦に裂くようにして動脈壁が2枚にはがれてしまうこともあります。
 
大動脈解離といって、避けた血管汚壁のすき間に血液が流れ込んで血栓を作り、枝分かれする動脈への血流を遮断してしまいます。また動脈と心臓の接続部まで血管壁が避けてしまうと、心臓の周囲を覆う膜(心外膜)と心臓の間に血液が溜まり、心臓を圧迫してしまいます。
 
この状態を心タンポネーゼといい、極めて危険な状態です。大動脈はへその高さの部分で左右に分かれて両下肢の動脈とはさらに細かく枝分かれし、糸球体という濾過装置で毛細血管となります。糸球体では毛細血管が毛玉のように球状になり、そこから血液を濾過して尿を作ります。
 
通常、濾過の際には血球やタンパク質は血管内にとどまり、尿中へ排泄されません。しかし、動脈硬化などによって血管内皮細胞が障害されると、尿中へタンパク質が漏れ出すようになります。このように尿中のタンパク質の存在は、動脈硬化による血管内皮障害の状態を示唆する指標ともなるのです。高血圧によって腎臓の血管に動脈硬化が進行すると、腎臓内の血流が障害されて腎硬化症を引き起こし、やがて腎不全となってしまいます。下腹部で二股に分かれた動脈は、左右の下肢を通り、脚の指先まで達します。
 
この分岐部より先の血管に動脈硬化が進行すると、下肢の血流が不足して冷えやしびれを生じるようになります。これを閉塞性動脈硬化症といいます。閉塞性動脈硬化症では、しばらく穂国すると次第に血流が不足し痛みやしびれのために歩けなくなり、少し安静にしていると再び歩行できるような上体に回復すうるといった特徴的な症状が現れることがあります。これを間歇性跛行と呼びます。
 
血流の障害が進むと、脚の先から壊死し、下肢の切断を余儀なくされることもあります。このように、心臓から出た動脈は全身の臓器につながっており、動脈硬化が進行すれば様々な部位で血管事故を起こすことになります。動脈硬化は体の各部位で同時多発する可能性があるので、例えば、下肢の動脈硬化が見つかれば、同時に心臓や脳の動脈硬化が存在する可能性も高いのです。
 

末梢動脈は動脈硬化があっても血管をしなやかに開くことができる

大動脈から分岐した動脈は、さらに枝別れしながら中動脈、さらに細くなりながら小動脈、細動脈となって毛細血管へと繋がっています。
 
大動脈には繊維が豊富で、心臓から出た血液をしなやかに広がりながら受け止め、続いてもとの形に戻りながら血液を末梢へと押し出しています。このような大動脈の動きは受動的で、神経による調節は受けていません。一方、中動脈から細動脈までの血管壁には繊維が少なく、かわりに平滑筋という筋肉が血管の壁を取り巻いています。この筋肉は、自律神経でコントロールされていて、交感神経が緊張すると収縮して内壁が狭くなります。
 
細動脈は抵抗血管とも呼ばれ、平均血圧を調節する役割を担っていて、動脈硬化によって壁が厚く硬くなり、内壁が狭くなると抵抗が増して血圧が上昇します。また、交感神経が緊張すれば一時的に血管が収縮して血圧が上昇するのです。さらに、交感神経の緊張が慢性化すれば、血管の素材そのものも動脈硬化を起こしてしまうことが分かっています。
 
全身の血管は加齢に伴って生理的に動脈硬化が進みます。動脈硬化の進み方には男女差があり、女性よりも男性の方が早く進みます。また、大動脈の壁は50歳を過ぎたころから急速に硬さを増しますが、末梢動脈はもっと若い頃から動脈硬化が始まって徐々に進行することが分かってます。ただし、末梢動脈の壁には平滑筋という筋肉の層があって、自律神経の働きで就職と拡張をコントロールされています。また、有酸素運動や魚の摂取などによって血管の内壁を覆う内皮細胞から、一酸化窒素(NO)という血管を拡張する物質が放出されるのです。
 
このように、末梢動脈にはある程度動脈硬化があっても、自律神経や血管内皮制帽の働きによって血管をしなやかに開くことができる機能が備わっているのです。かつて沖縄県は、日本一の長寿県でした。沖縄の高齢者たちはよく働き、おいしい物を食べ、夜には酒を飲みながら三味線で歌い踊り、最後はぐっすり眠る。このような規則正しい自然と一体化した生活習慣が、血管の老化のスピードを減じてくれるであろうことは容易に想像できます。
 
事実、あるテレビ番組の企画で沖縄の高齢者の血管年齢を計測したところ、ほとんどの人の血管年齢が若いという結果が得られました。沖縄の高齢者たちの血管を桜の木に例えると、幹也枝は年相応に老化していても春になればきれいな鼻を満開に咲かせることができる状態と言えます。
 
これとは対照的に、年齢が若く大動脈は年齢相応であっても緊張した生活を強いられ、自律神経のアンバランスから交感神経の働きを頻回に高めている人は、末梢動脈が収縮してしなやかさを失ってしまい、あたかも老化してしまったかのようになっている場合があります。このたいぷの人は、生活習慣の悪い若いOLに比較的よく見られます。
 

血管事故は静脈にも起こる

動脈と静脈をつなぐ毛細血管の太さは5~7ミクロンしかありません。1ミクロンは1ミリの1000分の1ですから、肉眼では見ることはできません。毛細血管は、動脈から無数に枝分かれして組織に網の目のように張り巡らされ、細胞との間でガスや、栄養分の受け渡しをします。
 
毛細血管の壁は、一層の内皮細胞でできていて、その間から血管内の酸素と栄養を細胞へと渡すとともに、二酸化炭素と老廃物を細胞から血管内へと受けとるのです。ちなみに、毛細血管の壁には筋肉がないので収縮や拡張による血流の調節機能はありません。
 
猛省血管に流された血液の約90パーセントが静脈へ流れて心臓へ戻り、残りの約10パーセントはリンパ液となってリンパ管に流れ、最終的に心臓へと戻ります。静脈血とリンパ液は、心臓の右心房から右心室へと流れ肺動脈へと運ばれて、肺に吸い込んだ空気から酸素を受け取り、二酸化炭素を渡すのです。酸素を受け取った血液は、動脈血となって左心房から左心室へと運ばれて、再び大動脈へ押し出され全身へと流れます。
 
ところで、血管の老化やトラブルで怖いのは動脈硬化だでけはありません。静脈の障害も様々な症状の原因となり、時には致死的な病気を引き起こすこともあるのです。浮腫いわゆるむくみは、毛細血管からしみ出した血液中の水分(血漿)が、リンパ管や静脈へと吸収されずに皮下組織に溜まってしまった状態です。重力の関係で浮腫は下肢に生じやすいのですが、手や顔にむくみが生じることも少なくありません。全身の浮腫の原因として最も多いのは塩分と水分の過剰摂取ですが、心臓や腎臓、肝臓の病気あ甲状腺疾患、貧血などでも生じます。
 
下肢にのみに生じる浮腫は、静脈の障害が原因となることが少なくありません。手氏の静脈には、竹の節のようにところどころに弁がついています。この弁は、心臓の方向へのみ血液が流れる仕組みになっていて、手足の筋肉の収縮に伴って血液を手足の先から心臓の方へと戻す働きをしています。この弁がうまく働かなくなると、静脈の血流が重力によって足の方へと逆流してしまいます。
 
弁は加齢とともにその働きが悪くなりますが、出産や品あによって高まった下腹部の圧によっても障害されて血液の逆流を生じることもあります。血液が静脈内を逆流すると、血管内圧の上昇によって血液中の水分が血管外の皮下組織にしみ出してむくみが生じるのです。
 
下肢の静脈の弁の機能低下で血液の逆流が生じれば、末梢の静脈の血液がうっ滞し、本来皮膚の表面上には見えない血管が青紫色に浮き出して見えるようになります。それば、下肢静脈瘤です。
 
色は皮膚と同色でただ膨らんだ状態のものや、細かい血管が集まって見える場合もありまうす。自覚症状としては、むくみ以外にかゆみやシミ、下肢が重く感じてだるくなる場合などもあります。
 
下肢の静脈を効率よく心臓に戻すためには大切なことがあります。それは、ふくらはぎや太ももの筋肉を動かすことです。この運動が不足すると、静脈の血液が下肢にうっ滞して静脈瘤の原因になることがあるのです。下肢静脈瘤は男性に比べて女性に多いのですが、その理由のひとつに下肢の筋肉量の差が関係していると考えられているのです。
 
下肢静脈瘤は、職業病的な一面も持っています。例えば、美容師や狭い厨房で働く仕事に従事している人には、男女を問わず下肢静脈瘤が生じやすいことが分かっています。規律した状態で長時間過ごすために下肢に血液がうっ滞すること、さらにダイナミックな足の筋肉運動が不足していることが原因として考えられます。
 
下肢の壊死脈でうっ滞した血液は、時に固まって血液を詰まらせてしまうことがあります。これは特に下肢の皮膚から深い部分を走る深部静脈に起こりやすいので、深部静脈血栓症と呼ばれています。静脈は、一か所で詰まったとしても、迂回路が発達しているので、静脈瘤やむくみが生じたとしても命にかかわるような症状には至りません。
 
ところが、下肢の深部静脈の血栓が剥がれて血流に乗り、右心房から右心室へ、そして右心室から出る肺動脈へと到達すると、肺動脈に血栓が詰まり、呼吸困難を引き起こす場合があります。医学用語では肺梗塞という病気ですが、このようなトラブルは長時間飛行機で移動した際に発生しやすく、特に長時間狭いスペースで過ごすエコノミークラスの乗客の場合に相当することから「エコノミークラス症候群」と呼ばれ、時には致死的は病気として広く知られるようになりました。
 
ただし、同様の病気はビジネスやファーストクラスの乗客にも起こることから、近年は「ロングフライト症候群」と呼ばれるようになっています。長時間にわたって狭いスペースにじっと座ったままでいる状況は、飛行機の中以外にもあります。数名並んで座るタクシーの後部座席、事故や震災などで車の中にじっとして数日過ごすことを余儀なくされた場合などです。
 
いずれにしても致死的な病気の原因となるので、絶えず下肢の運動をするように心がけるとともに、脱水の予防のために、こまめに水分補給することを忘れないようにしてください。
 
このように、血管年齢の老化が一因となって生じる血管事故は、動脈のみならず静脈にも生じるのです。

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